フリーランスになって10年以上過ぎました。
仕事内容は、言葉に関する様々なことと考えなどの図式化が主なところ。
まわりの諸先輩方に助けていただきながらなんとかやってきました。
フリーランスとして仕事を続けるノウハウは!なんて偉そうなことは言えませんが、わたしなりに大切にしていることは、いくつかあります。
その1つは、「頼まれたこと+αを提供する」ということ。
別の言い方をすれば、俗に言う「良い意味での裏切り」で、そうなることをとても意識して仕事をしてきました。
例えば、会議の議事録を作る仕事があったとします。議事録は言葉だけで書かれるものが多いと思われますし、依頼側もそういうイメージを持っている場合が多いでしょう。
そのような議事録制作、つまり頼まれた仕事自体も依頼主が「おぉ!」と感激してくれる品質になることを目指して制作しますが、併せて「頼まれたこと+αも提供」するようにしています。
議事録の場合でいう「+αの提供」とは、わたしの場合は「議事録の内容を構造化した資料も作って提供する」ということです。
構造化した資料の制作は、もちろん頼まれているわけではありません。それを作ることは+αの時間を要します。でも、依頼主が驚いたり、喜んでくれるのであれば、提供するこちらもうれしいので、作る時間は惜しくはありません。というより、作っている時は夢中になっているので、時間が惜しいとか、余分なことをしているという感覚がないのが正直なところです。
「+αの提供」で何を提供するのかは、頼まれたことをしている中で案外自然と出てきます。
先の議事録の例であれば、議事録を作っていく中で、「これって文章をずっと読んでいくよりも、内容を構造化した図があれば、よりわかりやすくてうれしいよね」と、自分が使う側だったらうれしいことが思い浮かんだりします。その思い浮かんだことを実際に形にして提供する、というわけです。
わたしは頭がスマートなほうではなく、物事を理解する時に、「これってどういう意味?」とひっかかりを覚えて立ち止まり、時間がかかってしまうタイプです。そのためか、頼まれたことをしている時も、頼まれてもいないのに「こうしたほうがわかりやすそう」や「これってどういうこと?」という疑問などが出てきたりしがちです。そんなことが頭に浮かんでしまったらもう後にはひけなくなって、ついつい頼まれてもいないものを夢中で作っちゃうんです。そしてそんな作業は楽しかったりします。
フリーランスになりたての頃、そうやって作ったものを「頼まれてはいないんですが…」とクライアントさんに提供したら、ものすごく驚かれて、喜ばれました。その時の先方の反応がすんごくうれしくって。プチ成功体験というのでしょうか。それから「頼まれたこと+αを提供する」ということを意識するようになりました。
全ての仕事でできてるわけではありませんが、振り返ると小さくても「+αを提供」してきた積み重ねのような気がします。
昨日、『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』という番組で、赤字になるのに大盛りを出す飲食店が紹介されていました。「なぜ大盛りにするの?」と番組スタッフさんが質問すると、店主の方は「お客さんが喜んでくれる顔を見るのがうれしいから」といったような回答をされていました。この言葉を聞いて、頼まれたこと+αを提供した時の驚き、喜んでいるクライアントさんを見るのがとってもうれしいことを思い出し、「あー、わかる、わかる!、オモウマい店とフリーランスって共通するところがあるのかも」なんて勝手に共感したのでした。
業種は違えど、いえいえ業種に関係なく、いやいや仕事でなくても、人に喜んでもらえるのって、やっぱりうれしいですよね。
冒頭でわたしなりに大切にしてきたことの1つとして、「頼まれたこと+αを提供する」と書きましたが、なんのためにそれをするのかと言えば、クライアントさんが驚いたり、喜んでくれる反応を見るのがうれしいからなんですよね。これは承認欲求なのかもしれませんが、喜んでもらえると素直に「あぁ、がんばってよかった」と思え、「また、頑張ろう」と思う力になるんですよね。
だからわたしはこれからも楽しみながら「+αを提供する」ことを続けていこうと思っています。